ワンマン経営の会社に勤めて〜『ユニクロ潜入一年』を読んで

話題のユニクロ潜入レポートを一気読み。渾身のルポルタージュで、読み応えありました。

柳井社長のワンマンな人物像が浮かびあがり、又、ユニクロが大変な会社だ、という印象を与える本ではあります。中国や東南アジアの劣悪な労働環境について追及する章もあり、フェアトレード的に考えるとユニクロでの買い物をためらわせるインパクトはありました。

現場のレポートは、リアルで真に迫るものがありました。ユニクロに勤める知人は何人かいるのですが、仕事の話しを聞いたことがありません。これも「秘密保持」のせいだったのか。

大学のキャリアカウンセリングで、ユニクロでバイトしていた学生から似たようなエピソードを聞いたことはあります。

ユニクロでは、学生のアルバイトでも、二、三年働くとすっかり”ユニクロ教”にはまるタイプがいる。私が最後に働いた新宿のビックロにも、閉店後に作業をしていると、私を含めた周りのアルバイトに、「そこ何分で終わるの」と、ユニクロの正社員と同じ口調で、時間を詰めてくる男子学生がいた。そうしたアルバイトに出くわすたびに、”ユニクロ教”の威力に驚いた。

私自身、ユニクロではありませんが、ワンマン経営の会社で人事担当として一年近く勤めたことがありました。

柳井社長の発する言葉と、私が勤めた会社のカリスマ創業者のそれが似通っていました。性格や行動の傾向も似ています。

今ではブラック企業の代名詞となってしまった会社ですが、私がいた当時はユニクロと並び、急成長を遂げる会社として注目を浴びていました。

ブラックと言われる前から、私含め社員は苛烈な働き方をしていました。でも、会社の雰囲気は決して悪かったわけではありません。社長に対する信望が非常に強く、付いていきたいと社員に思わせるカリスマの威光はありました。

ただ、私は当時の体験した事柄について、記憶があまり残っていません。辛かった思い出なので、脳が忘れたがっているのかもしれません。

そうしたなかで本書を読み、夜寝付けなりました。ブラックで「やりがい搾取」だった職場のことが思い出されて、記憶がフラッシュバックしたからです。

下の朝礼など、私がいた会社の店舗でもよく見かけた光景でした。

入社直後、この総店長が朝礼で、「ビックロは世界(中にあるユニクロ)で仕事が一番しんどい店」と話しているのを聞いた。

「ビックロが天下を取るための目の上のたん瘤である、銀座店が十一月に入ってから苦戦しています。正直いって、ビックロは、世界で一番(仕事が)しんどい店です。スタッフは心のなかではアルバイトの皆さんに感謝しているんです。だからこそ、売上を取って、黒字にしなければいけないんです。そうすれば、みんなも満足感や達成感を味わえる。結果次第で、努力が報われたという喜びや、自分が成長したという達成感を手にできるのですから」

それを聞きながら、この総店長は相当ずれているな、と思った。それとも、ずれているのを承知の上で、そんな戯言をほざいているのか。

誰が考えても、アルバイトが望んでいるのは、仕事の達成感や満足感より、時給のアップだろうが。世界で一番しんどい店舗の時給がたったの千円だというのだから、人が十分には集まらないんだよ。

私がいた会社の社長は「仕事を通じた人間的成長」「時給+α」という言い方をしていたな。私は、社長の虚言がでると反応し、ときに毒づいた為に、会社に長くいられなかったわけですが。

ユニクロ潜入ルポ本を読了した翌日、一ヶ月前に読んだ『衰退の法則』の章「オーナー系企業の内側」を読み直しました。こちらも企業内部の迫真にせまり、読み応えのある本です。

本書で取り上げられる企業は、特定できないようにデフォルメされています。U社は、本書のP社かもしれないと想像しながら読みました。

「物事はオーナーが全部決める。役付き役員ですら、自分の所掌内のことも決められない」(P社OB等)

「○◯会(会議の名称)」は、意思決定会議との立てつけになっているが、実質上はオーナーだけが意思決定を行う」(P社OB等)

「P社は軍団。オーナーという神が存在する。オーナーとわれわれという構図。会議は彼の独演会にすぎない」(P社OB等)

「ビジョンとか戦略とか方針は、オーナーの専決事項。方針をオーナーが出して、それを具体化するのが他の人間ということ」(P社OB等)

「幹部の人は自分に求められていることをわかっている。自分のことを見切れると思う。だから、しがみつく人はいない。賞味期限が切れたと思ったので自分も辞めた」(P社OB等)

「前週起きたことは、今週月・火までに解決して、新しい打ち手は火・水までに打っておいて、その週末を迎えるという時間軸。一週間前というと『相当昔のこと』との感覚」(P社OB等)

『衰退の法則』を読んだときも、過去に勤めた潰れた会社のことを思い出し、ゾクゾクしました。学術的な書きぶりだったおかげで、フラッシュバックはしませんでした。

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