カープの労働環境の研究をしております

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25年ぶりのリーグ優勝を果たし、CS初戦にも勝利して、日本シリーズへと着実に駒を進める広島カープ。黒田投手の200勝、新井選手の2000本安打の大記録が生まれ、「カープ女子」なる流行語を生みだし、広島界隈が大いに賑わっている様子が伝わってきます。

かくいう私もカープファン。なんていうのは嘘で、名古屋で生まれ育った中日ファンです。でも、この数年はプロ野球をほとんど見ておりません(落合ファンでした)。

そんな私がいま、カープ研究をしています。興味の対象は選手や成績ではなく、カープの労働環境。好奇心をもったきっかけは、先月出張した際、帰りの飛行機で読むために買った文庫本で見つけたマエケンこと、前田健太投手の台詞です。

「はっきり言わせてもらうと、投げ込むことについて、いいと思えることはひとつもありません。肩、肘は消耗品です。数多く投げれば投げるほど、肩、肘がよくなるということは100パーセントありえないと思う」

カープといえば「胃から汗がでる」ほどの厳しい練習で知られた球団です。そんなチームの絶対エースが、猛練習を否定する発言をしているのが凄い。

もしかしてカープの快進撃は、ガムシャラな練習を強いる根性論的ハードワークを否定するところから始まったのではないか。そう予感しました。同書に、ミスター赤ヘルこと山本浩司元監督が、著者の「猛練習が行われていない現状をみてどう思うか」という質問に答える形で、次のように述べていました。

「これは時代の流れだよ。われわれの時代は厳しかった代わり、試合数が少なくて、オフは3ヶ月休んで入られたよね。いまは130試合から144試合になった上にCSもあるでしょう。それに、いまの選手はオフも身体を休ませないほうがいいと、ウェートや何かで1年中ずっと練習している。この時代にはこの時代にあった練習方法があるんだよ」

かつてのやり方では勝てない!と自己否定し、仕事の仕方を変えた。
カープが25年ぶりに優勝した秘訣は、過去の成功体験の否定にあり!

そんな仮説を立て、この3週間ほどカープ本を読み漁りました。
Numberの特集号にも目を通しました。
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そして検証した結果、まだまだ根性論が根強いことが分かりました。OBから「もっと練習を厳しく!」「他球団の選手とへらへら話すな!」と、過去の成功体験に基づいた主張ばかり聞こえてきます。カープを上昇気流に乗せた野村謙二郎前監督は『変わるしかなかった。』ですが、根っこはやはり根性論。

現役の若手選手たちはスマートで、カープ女子が萌えるのも分かる気がしましたが、練習をきっちりこなしている選手が活躍しています。選手から「練習は’量’ではなく’時間生産性’を重視する」といった発言が出るのを内心期待したのですが。

ところで、過労自殺した電通社員の悲劇が話題になっています。かつて過労死しかけたことがある私にとっても、大変に関いの高い社会問題です。マエケンの練習スタイルが長時間労働を是とする社会への牽制球になればと思ったのですが、その目論見は外れた模様。日本は野球も企業も世代交代しないと、メジャー流になれないのかもしれません。・・前田投手は先輩が投げ込みで故障したのをみたことが独自の練習方法を貫く理由でした。

そもそも、サラリーマンの労働とプロ野球選手の練習は、比較対象にすべきではありませんでした。プロ野球選手は球団に属しつつも、待遇は個人事業主と同等で、球団に雇用されているわけではありません。

「100時間で過労死は情けない」と投稿して顰蹙をかった大学教授がいましたが、雇う側と雇われる側では労働時間に対する捉え方が全く異なります。労働時間の長さよりも、主体性の確保(=やらされ感がないこと)が重要なのだと思います。

まだまだ分析は甘いので、カープ本をもう少し読み進めながら、今年の日本シリーズはカープで楽しもうと思った次第。ちなみに、これまで読んだなかで面白かったのは二宮清純さんのカープLOVE本でした。

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