天童睦子編『育児言説の社会学』

私が大学院の修論でテーマにするのは「父親の育児」です。

そして、今回の修論には入れない予定なのですが、試みたい研究テーマがありました。それは、過去のメディアで「父親」がどのように取り上げられているかを調べ、時代背景と合わせて考察することです。

2010年のイクメン・ブームを境に「父親」がテレビや雑誌に頻出するようになりました。それ以前、父親は子育ての場面では脇役ないしは観客扱いされており、テレビのドラマやアニメに出てくる父親は「いつも怒っている人」という印象でした。(星一徹、寺内貫太郎、磯野波平など)

それが2000年代になって「育児している父親」がテレビに登場し、イクメンタレントが現れました。『FQ JAPAN』など父親向けの育児専門雑誌が出版されるなど、「父親」を取り巻くメディアの様相はかつてと比べ様変わりしています。

しかしながら、テレビや雑誌が「父親」をいつから、どのように扱ってきたかについて調べたことはありません。父親支援の研究者を志す者として、いつか追究したいテーマでした。

仮説として、メディアによって「男は仕事、女は家庭」の性別役割分業、いわゆる「伝統的家族観」が形成されたと考えます。又、一口に昭和といっても、戦前・戦後/高度経済成長/オイルショック/バブル期の各時期によって「父親」の扱いが変化したと予想します。

そうしたテーマの研究を考えていたら、先行研究を見つけてしまいました。

『育児言説の社会学』は、1990年以降の代表的育児関連誌の変遷と特徴、そこに立ち現れる育児言説の変化を考察するとともに、2000年代に登場した父親向け育児・教育情報雑誌を取り上げ、分析した研究書です。

とりわけ、父親向け育児教育雑誌の分析に紙面が多く割かれています。「まえがき」に次の説明があり、がぜん興味をもって読み進めました。

本書で詳しく取り上げるように、父親向けの情報誌として、とくにビジネスマンの父親を意識した育児・教育雑誌が登場した背景には、「父親の積極的育児参加」を促す男女共同参画型育児の推進という社会的動向があるとともに、現代の育児・教育を取り巻く状況に危機感を抱く親たちを中心に、少ない子どもにできるだけ投資をしようとする「少子化時代の育児戦略」が垣間見える。

父親向け育児・教育雑誌として、『日経Kids+』『プレジデントFamily』『FQ JAPAN』の三誌が取り上げられ、それぞれの紙面分析や編集者へのインタビューが紹介され、興味深い分析がなされていました。

分析の中身は本書を手にとっていただくのがよいと思いますが、三誌の特徴を表す一文が的確で、この箇所のみ転記します。

①『プレジデントFamily』では、学歴や学校教育的価値を至上のものとし、社会で成功する子どもの育成に勤しむ「ハードな受験志向」の父親

②『日経Kids+』では、学歴や学校教育的価値の実現と子育てを楽しむことの両立を企図する「ソフトな受験志向」の父親

③『FQ JAPAN』では、楽しみとしての子育てと家族と親しむ休日を至上のものとする「親密な父性」を有した父親像

私自身でいえば、子どもの受験には興味がなく、又、ファッションとしてイクメンぶるのは好みではありません。なので、三誌ついていえば、

①体質的に受け付けない
②特集によって読むことはある
③「商業主義的な色合い」が強くて敬遠

そうした個人的な感覚が、本研究によって立証されて納得しました。

ほかにも、主にママたちが読む育児雑誌の各誌で「父親」の頻出頻度を調べた調査結果も本書で述べられていました。分析結果から発見があり、勉強になりました。

本書は育児雑誌の研究でしたが、テレビは扱っておらず、まだ研究する余地が残っていそうです。でも、また探し出すと、きっと先行研究が出てくるような気もします。(←どなたか知ってたら教えていただければ)

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