宇野常寛『母性のディストピア』

こちらも大学院の授業で紹介された本。未来の希望はない絶望の文体で、戦後日本でユートピアを描けない状況を切々と語る。

久しぶりに難解な文章に出会った感あり。用語が難しく、文章構成が入り組んでいて、読み解くのに骨が折れた。

例えば、次の文章(413頁)

戦後日本とは、ファンタジーを通してしか暴力や戦争の本質ーー例えば私たちの内側にある破壊や日常性の断絶への畏れとは裏腹に存在する憧憬を含めたものーーについて本当の意味では考えることができなかった国家だ。そしてあの決定的な敗戦から70年が経ったいま、同じように日本人が正面から向き合えていないこの国の変わらなさ、巨大な負債ーーそれは原発であり、錆びついてあちこちで機能不全を起こしている戦後社会そのものなのだがーーをその内部に抱え込んでゆっくりと壊死していこうとする現実が存在する。

本書の内容は、宮崎駿、富野由悠季、押井守のアニメ業界巨匠の作品遍歴と深層心理を抉り出し、戦後の政治と文学を総括したもの。

私も宮崎駿の映画やガンダム、シン・ゴジラを観ていたが、あくまで娯楽であり、そこまで深く考えていなかった。

そのことを自戒するとともに、私も『この世界の片隅に』の主人公のように

「小市民的な幸福感が戦争という巨大な破壊からその心を守る砦」

といった感覚を有しており、刹那な生き方をしていると実感した次第。

まったく頭が痛くなる本であったが、ひとまずは本書の視点をもって『もののけ姫』を見直してみよう。

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