福島直樹『学歴フィルター』

学歴フィルターとは何か。
最近出版された新書『学歴フィルター』で紹介される定義は以下のとおり。

・狭義の学歴フィルター・・学校歴差別の一種。上位大学を優先してウェブ上でセミナーの受け付けをするようなシステム上のフィルター機能を言う。

 

・広義の学歴フィルター・・学生によっては学歴差別全般をこう呼ぶ場合もある。

大企業は、とりわけ応募者が殺到する人気企業は学歴フィルターやっていますよね。やらないと効率が悪いですから。

でも、「わが社が人物本位で選考します」とか建前をいって、認めることはまずありません。何を恐れているのだろう?と思います。

学歴フィルターの存在は学生に対しては秘め事で、まことしやかに言われたりします。ある雑誌で、R社出身の就活コンサルタントが「学歴フィルターなんてありません!」と否定するインタビューを読んだことがありますが、何を言ってんだい。そもそもR社の提供する○○ナビが、フィルター機能を実装しているわけで。以前、私が企業の採用担当をしていたとき、R社の営業からフィルター機能があることをウリにしたセールストークを受けたのを思い出して、その就活コンサルタントの発言に思いっきり白けました。

学歴フィルターは企業の採用担当者内では常識の範囲。それを言わないで就活ビジネスをするのは学生を騙し売りしている確信犯で、信用ならない人物だと思ってしまいました。

しかしながら、学歴フィルターが都市伝説になってしまうのは仕方がないことです。学歴フィルターについて噂レベル以上のもの、きちんと分析や解説をした書物を見たことがありません。

そうしたなかで、学歴フィルターの実態について、本書で初めて読みました。学歴フィルターの実例や背景となるメカニズムが述べられるとともに、企業側の本音と事情が伝わる内容でした。

そもそもなぜ企業は学歴を重視するのか。本当にそれで優秀な人材を集められるのか。ペーパーテストは得意だが仕事はできない。そんな人間が集まりはしないか。低選抜大学には受験勉強は苦手だったが、柔軟な発想ができる学生がいるのではないか。

これは長年、学歴偏重の批判が出る度に、浮上してきた問題だ。

だが、企業が学歴を重視するのには合理的な理由がある。それは、優秀と感じられる学生の出現率は大学の偏差値にある程度「比例」するからだ。

企業も、学歴(学校歴)を絶対視しているわけではないのだけれど、上位校の方が「優秀と感じられる学生」に出会える確率が高い。そこで、採用活動の効率化と欲しい人材を確保する精度を高めるために、学校名を参考にした選抜を行なっているのが学歴フィルターの実態です。

そして、多くの企業は上位校だけで採用を固めるのではなく、組織人材の多様性を保つために、低選抜大学からも優秀な学生を採用する意欲はあります。

そうしたなかで、本書の後半は学歴フィルターによって不利を被る学生に対するアドバイスが盛り込まれており、良心的な本だと思ってしまった。


 

ここからは、本書に書かれているわけでない個人的な見解です。

都内の女子大学でキャリアカウンセラーを7年勤めています。学生の就職相談に乗りながら、いつも思うことがあります。

なぜ、大学受験では東大や早稲田慶応に入学するのは早々に諦めたのに、
就職活動で人気ランキング企業に自分も入れると思ってしまうのだろう。

マスコミや出版社など超人気企業はそもそも倍率が高すぎて、内定をもらえる確率が極端に低いです。学歴フィルターで受かる確率がさらに低まるなかで、勝てる見込みの薄い人気企業をあえて狙うのは賢い作戦だと私には思えません。

「あこがれだったので」「記念受験で」という学生もいます。入試とちがって就活のエントリーに費用はかからず、クリックすれば応募できることもあり、応募のハードルは低いです。ただ、業界研究やESを書くのに数時間の労力はかかるわけであり、報われない努力になる可能性が高いです。

宝くじを買うようなダメ元で応募したとしても、落ちればそれなりに痛いです。数打ちゃ当たる作戦もありですが、落ちたときのダメージが蓄積されて、メンタルヘルス的には具合がよくありません。

学生が幻想を抱いてしまうのは、企業の採用基準が曖昧だという理由もあります。日本企業はメンバーシップ型の雇用で、募集する職務の要件が明確ではありません。求められる人材像が漠然としていて、必要とされる条件をはっきりしないので、学生に「自分でもやっていけそう」と変に期待をさせてしまいます。学生と企業双方にとって罪な状態になっていると思います。

例えば、私のキャリアカウンセリングで、こんなやりとりがよくあります。

学生「海外とつながる仕事をしたいので総合商社を志望します」
私「それはいいね。で、TOEICの点数は?」
学生「TOEICの点は低いんで」(又は、受けてないんで)

それって、アウトです。

総合商社で仕事するのに英語力は必須で、英語が使えない人を採用することは、まずありません。実際、某総合商社が採用基準でTOEICの点数を設定していることを個人的に知っています。

TOEICの点数が低い学生には、そうした事情を話して総合商社への応募を諦めた方がいいと伝えます。勝ち目のない努力をして、無駄なエネルギーを使うのが勿体無いと思うからです。それでも「夢をあきらめたくない」と突き進んで轟沈する学生が毎年います。

学歴フィルターは「新卒一括採用」という世界に例のないシステムをもつ日本企業が、ガラパゴス的進化を遂げた一つの形態です。

『学歴フィルター』の著者から提案されていた改善メニューにはありませんでしたが、学歴フィルターをなくすためには、新卒一括採用をやめたらいいんじゃないと個人的には思います。

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