ただいま岩田健太郎さんの本を乱読中。

ダイヤモンド・プリンセス号の動画で話題となった、岩田健太郎さんのツイッターをフォローしました。

私は病気や疫学の知識はなく、知らないことばかりのなかで岩田さんのツイートで勉強になることがとても多いです。正しくおびえて自己防衛するための情報として有益です。

ご著書もあるのを知り、最寄りの書店にあった新書を購入しました。

SNSが進歩した現代において、デマの広がりは凄まじく、しかも間違った情報の方が広がりやすい。「嘘のほうが真実よりも広がりやすい」は研究でも確認されています。(注:原文には参照元の文献タイトルあり)嘘じゃないよ。
例えば母乳信仰。(73頁)

まさに、そうしたデマが広がっている最中であると実感します。

岩田氏の本をもっと読んでみたいと思い、行きつけのジュンク堂・池袋本店にいきました。医療のコーナーに専用棚ができていました。さすが!

医学専門書はさすがに手がつけられず、興味が湧いたものを数冊買いました。

光文社新書『「感染症パニックを防げ!リスク・コミュニケーション』は当たり!

新型コロナウィルスの情報が錯綜する状況のなか、パニックに陥らないために、今まさに読まれるべき良書です。

アンダーライン引きまくりでした。少し長いですが、引用します。

パニックは、クールで理性的な対応を難しくし、人々はよけいな苦労に苦しんだのです。その苦労は、感染症の実被害以上の苦しみを与えました。(中略)
感染症のリスクを扱うときは、単に患者を診断し、病原体を見つけ、その病原体を殺して治療する以上の何かが必要であると。感染症の実被害以上に問題となる「パニック」と対峙することが大事であると。
それはすなわち、「コミュニケーション」を扱うことと同義であります。(5頁)

リスク・アセスメントのときには、リスクの「起こりやすさ」と「起こったときの影響」を両方考えなくてはなりません。そして両者を個別に考えることも大切です。
また、リスク・アセスメントに続いて行われるリスク・コミュニケーションの際にも、両者を区別して、「どちらのリスクの話をしているのか」を聞き手に分かりやすく説明することが肝要になります。(5-6頁)

大胆な未来予測は一般受けしやすいです。断言口調はマスメディアに好まれます。「結局どうなんですか」と一言で結論を言わせるのは、テレビのニュース番組や討論番組の常套手段です。しかし、テレビに出て、断言口調の未来予測を乱発するような専門家は、あまり信用しない方がよいのです。
自然災害や感染症の流行を検討する場合、リスク・アセスメントは必ずしも正確ではありません。したがって、リスク・アセスメントにおいては、ピンポイントで未来を予想しようと無茶をするのではなく、その予測が外れる可能性も込みにして、幅を持たせて考える必要があります。(51-52頁)

いくつかの可能性を同時に検討し、さまざまなリスクを複合的に検討する能力は、実際に診察現場で感染症と対峙しているプロでないと分かりません。しかし日本では、感染症対策は、現場を知らない官僚が「机上の空論」でプランしてきました。
もちろん感染症の専門家たちも官僚をサポートしていますが、彼らのほとんどは微生物学者であり、現場の臨床家ではありません。「あの」ウィルスという「分かっていること」については誰よりも詳しいですが、「目の前で熱が出ている人」という不確定な状態に対応する能力もなければ、訓練も受けていません。
もっとも最近では、臨床経験の豊かな厚労官僚も出てきていますので、よりフットワークの軽い、臨機応変なリスク・マネージメントがなされることを期待しています。(59-60頁)

リスク・コミュニケーションの目的は、リスクを正確に把握し、正しく対応すること、すなわちまっとうなリスク・マネージメントが行われるためにあります。リスク・コミュニケーションの目的はリスク・マネジメントにあるのです。
これに対して、メディアの目的は単なる情報発信だけではありません。ときにメッセージを伝えて聞き手を喜ばせたり脅かしたりすること「そのもの」が、そのエンターテイメント性が目的化します。いわゆる「煽る」行為がこれにあたり、視聴率を伸ばしたり、発行部数を上げること「そのもの」が、リスク・コミュニケーションの本来の目的=リスク・マネージメントに優先されます。(93-94頁)

リスクとは、リスクそのもの「だけ」でやってくることはないのです。そこには必ず怒りのような感情が伴います。ですから、感情を込みにして初めて、リスクは現実世界のリスクとなるのです。
これが「危険と怒り」という考え方です。リスク下では、人々は起こったり、取り乱したり、パニクったりするものです。そういう感情面に配慮せず、ただ「情報」だけ流していても効果的なリスク・コミュニケーションは成功しません。(141頁)

人がリスク下にあるとき、情報をキャッチしたり解釈する能力は著しく低下すると言われています。通常の半分も、情報をまっとうに扱えないのだそうです。こういうときに、通常のやり方で情報伝達を行おうとしても、それは効果的なリスク・コミュニケーションとはいえません。
なので、リスク下にあるとき、とくにそのリスクが大きいときは、短いメッセージ、通常は3つ以内のメッセージを、繰り返し伝える必要があります。(143-144頁)

流言、デマは、放っておくとどんどん広がっていきますし、ブログなどに出されたデマも、引用に引用を重ねて回収不可能な状態になってしまいます。
しかし、逆にこのようなブログやツイートを直接つかまえれば、それに対する効果的な反論も可能です。流言、デマの流れやすさは、その修正のしやすさと併行して起きているのです。
だから、こうした流言、デマを看過し、流しっぱなしにしてはいけません。私は感染症関係などのデマをツイッターで見つけると、こまめに修正しています。「子宮頸癌ワクチンは不妊の原因になる」みたいなデマは、見つけたら細かく訂正していきます。
これを繰り返していると、デマの力は薄まっていくことが多いです。(145頁)

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