自治体向け協働研修の一日コース

自治体職員を対象に「住民協働研修」を行いました。9-17時の一日研修です。

2014年度から四年間、逗子市市民協働コーディネーターという非常勤特別職に就き、市民協働の仕事にどっぷり浸かりました。このときの経験から得た学びは得難いものが多く、伝えられることはいくらもあります。

ただ、私は協働の実践者ではあったけれど研究者ではないので、専門的な話しをすることはできません。

自治体で協働テーマの研修を行う際に、例えば市民活動支援課など協働を業務とする職員が対象となる場合と、本来業務は別で「協働の視点をもって仕事してください」といった目的で様々な所属から職員を集める研修では、伝えるべき内容が異なります。

今回ご依頼があった協働研修は後者でしたので、専門家ぶった話しをしなくて済みました。

といった前置きをしつつ、協働研修をどういった内容で行なっているのかを以下に記します。

先にお伝えすると、「協働とは云々」といった解説はあまりしません。お説教ぽい話しは得意でなく。

まずは言葉の整理から始めます。二つの問いかけから。

「参加」にはなくて「参画」にあるものは?

「参画」には「苦」がある

 

「協働」「共同」「協同」の意味の違いは?

幼稚園の砂場で例えられる

本当は、協働の研修なので「協働」の定義くらいは押さえるべきと思って、いろいろ調べました。でも、よく分かりませんでした。

「協働」は英語でいえば、’Co-production’ ‘Collaboration’ ‘Partnership’ といった多義を含む言葉で、定義しづらいのです。

協働は、そんな曖昧さに満ちた造語であることをお伝えしたうえで、「そもそも論」の話し合いをしました。

「住民協働って必要?」

研修の流れからすれば「必要です」の答えになるのが必然です。

「必要」or「不必要」or「分からない」の三択で受講生に挙手を求めましたが、さすがに「不要」で手を挙げる人は誰もいませんでした。皆さん、空気を読むのは上手です。

ここで、ちゃぶ台返しをします。

実は、私が協働の仕事を勤め上げて思い至ったのは、「もしかしたら、協働しなくて済む社会の方がハッピーかも」ということでした。

協働は面倒くさいのです。協働は手間がかかって仕方ありません。職員が自分たちで片付けてしまう方が、よほど早く仕事が進むというものです。

協働はときにコントロール不能で、手強いです。市民の意見は多様で合意形成が難しい。庁内の打ち合わせなら30分で済む話しが、住民と協働の会合は議論百出で3時間以上かかってもまとまらないことがざらにあります。

そして、行政と市民の話し合いの場を設けると、役所のやることなすことにファイティングポーズをとる方が一定数います。感情論に持ち込まれると、話し合い自体が成り立たない展開に。

そう、協働で行政と市民が向き合うと不満が出やすいし、お互いにストレスがかかるのです。ついでに言えば、協働の会合は平日夜と土日になりがちで、職員の超勤が増えるのも頭が痛い。

そんなデメリットはありつつ、それでもやはり、協働は「必要」なのです。

なぜなら、行政は万能ではないから。地域の課題は個別化・複雑化・多様化し、公平性を重視する行政が全てをカバーすることはもはや不可能。

地域課題を市民の力で解決するのも難しい。市民の地域活動は基本ボランティアで、出来ることには限界があります。介護福祉などの専門性が求められる分野、予算が必要な事業になると、市民には手が出せません。

行政だけでは出来ない。市民力で行うのも難しい。ならば、行政と市民で手を結ばねばならぬ。

そうした「必要悪としての協働」が求められる面があります。

とりわけ、行政側が協働を進める本音に予算削減の思惑があったりするといけません。ボランティア搾取の協働は「俺たちは行政の下請けじゃない!」と反発されるのがオチです。

その一方で、協働はより積極的なメリットも勿論あります。それは、行政だけ・住民だけでは決して成し遂げられなかった事柄が、協働することによって実現できることです。

協働の事業を進めると、地域からタレントが現れます。行政から協働を呼びかけると、これまでノーチェックだった人財が登場することがよくあります。

ある意味、行政が手を離すことで、その分野の専門性に優れた、地域貢献意欲が高い市民の出番が生まれます

職員もまた、そうしたタレントと出会うことで刺激を受けます。地域に人脈ができて仕事に生かされ、職域を超えた動きをするなかで、これまでの発想ではありえなかったアイデアが湧き出ることがあります。

要は、協働にコミットすると職員の仕事の幅が広がるのです。

協働のプロセスは正直、色々な場面で苦労します。でも、その過程が困難であればあったほど、プロジェクトXを成し遂げた後のビールが美味い。

協働に関わって、地域のことをよりよく知る。協働したおかげで、役所の職員や地元の人と知り合いになれる。お互いに一緒に仕事することでチームができて、連帯感が生まれる。そうして自分たちのまちが以前よりも居心地のよい場所に感じられて、愛着が増す。

協働がうまくいくと、まちに笑顔が増える

これが協働する最大のメリットであると私は考えます。

他にも色々とスライドを用意しました。でも、理屈っぽい話しをはじめると受講者の皆さん意識が遠のくので、飛ばすことが多いです。子ども食堂を始めた話題は反応が比較的良いかな。

そして、これだけは!と伝えたいことがあります。

協働するうえで大事なものは、手法の以前に「想い」です。協働のベースは、これに尽きます。

地元愛リスペクト

と、こんな調子で書き始めたら一冊の分量になりそうなので、今回はここまでにいたします。

実際の研修は理屈ぽい講義は少なめで、グループワーク中心の参加型で進めます。公務員あるあるのネタをふんだんに繰り出して、笑いの多い研修です。

グループワークは、行政と市民団体の強み・弱み分析、合意形成の難しさを体感するコンセンサスゲーム、住民とのコミュニケーションのコツ、協働提案ケーススタディといった内容で行います。

最後は、私のなかで流行りの「寸劇ワークショップ」で締めくくります。今回も大いに盛り上がりました。

とりあえず、協働のスタートは、

「今日どう?」と声をかけあう関係づくりから。


(上記画像は府中市制作・市民協働推進動画「今日どう?協働3!」より転載)

 

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