私のキャリアカウセリングはナラティブ・アプローチだった。

広尾にある某女子大学でキャリアカウセラーをしています。2012年から担当しており、今年で7年目に入りました。これまで1500人以上の学生の相談に乗りました。

カウンセリングは、主に就職相談です。相談の具体的な内容については守秘義務がありますので、此処に載せたりはいたしません。

就職活動のスケジュールとして、就職協定では3月1日が就活解禁日で各社が会社説明会を開始し、6月1日が選考開始で面接が始まります。建前としては、そうなっています。

そのスケジュールに沿う形で、3月以降はエントリーシート(ES)の添削を希望する学生がキャリアセンターに殺到し、6月前後は模擬面接を求める学生が激増します。

就職活動の問題点や、就活で正解探しをする学生の心理について色々と思うことはありますが、又別のエントリーで述べることにしたいと思います。

ESの添削や模擬面接で、私はよく ミラクルクエスチョン を使います。

「本当のところはどうなん?」
「本音で考えてることは何?」

例えば、志望動機。

応募する企業の会社案内に掲載された文言をコピペし、授業で提出するレポートのような文章を書く学生が多いです。

でも、採用担当者がESを通して知りたいのは「あなたはどういう人なのですか?」であって、正解を尋ねているわけではありません。

そして、コピペして頭の中でこさえた文章では人柄や想いは伝わらないですし、どの学生も似たようなことを書くので差別化ができません。

そこで、学校のテストと就職活動は違うのだ ということを理解してもらい、そのうえで、

「どうしてその会社や業界に応募したいと思ったのか」を本音ベースで聞き出すのが、私のキャリアカウンセリングで行う常套手段です。

最初に「その業界を志望する理由は?」と質問すると、「なんとなく」としか答えられない学生が結構います。そうした学生でも、応募したいと思ったキッカケや本音の動機はあるわけです。

学生に本音で考えていることを語ってもらい、その言葉をもとに、私が代わってストーリーを紡ぎ出します。すると、添削で持ってきたESの文章とは全く異なる志望動機が現れます。

「本当の志望動機は、こういうストーリーじゃない?!」と伝え返すと、目から鱗の表情になる学生がほとんどです。

と、

このように書いている私も、経験を重ねるなかで「なんとなく」そうした形のカウンセリングをしていました。最近、このやり方が理論に基づかれていることを知りました。

ナラティブ/社会構成主義キャリアカウンセリング と名付けられています。

以下、渡部昌平著『ナラティブ/社会構成主義 キャリアカウンセリング』の「はじめに」より引用します。

従来のカウンセリングでは、問題解決のために例えばクライエントの認知や行動を「変えよう」とします。

ナラティブ/社会構成主義カウンセリングでは、変えるというよりもクライエントの中にある(未来のための)別のストーリーを「引き出す」ということを重視します。(中略)

ナラティブ/社会構成主義カウンセリングでは過去の原因や現在の悩みをカウンセラーが理解する過程よりもクライエントの「望ましい未来の構築」に焦点を立てるため、終結まで早く効果的に進行するとされています。

「ナラティブ」は、クライエントが語る「物語」を通して解決策を探るアプローチ。「社会構成主義」は、客観的事実ではなく「意味づけ」を重視します。

就職相談でいえば、「あなたが学生時代に最も力を入れたことは何ですか?」という通称「ガクチカ」の設問に対し、「最も」に引っかかって書けなくなる学生がいます。

そうした学生は「最も」にこだわるがゆえに、「私が一番力を入れたことって何だろう?」と考え込んだり、「人に言えるようなガクチカなんて私にはない」と頭を抱えてしまうのです。

そこで私がいつも伝えるのは、「一番のことを書かなくてよいです」。

採用担当者が知りたいのは、ガクチカから伝わる応募者の「人となり」であり、経験の中身そのものを知りたいわけではないからです。

もう少し言うと、ESや面接では「すごい経験をしてきたこと」を説明するのではなく、ガクチカを通して「あなたという人物像」を物語として伝えることが大事なのです。

この発想の転換ができるようになると、これまで落ちまくっていた学生も、ESや面接でスムーズに通過するようになります。

 

就活についてはたぶん一冊の本になるくらいのネタがあるのですが、今回はこの程度で。

私の本音としては、「お金持ちの人と結婚したい!」という相談にどう答えたか、という話しを書きたいのですが、守秘義務がありますので、この辺りで。

 

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