大畑裕嗣ほか編『社会運動の社会学』

代わりに選んだテーマは「ファザーリング・ジャパンの実証研究」。私が所属する父親支援団体のことを徹底研究しようと考えた次第です。

指導教官の中村陽一先生に「社会運動論としてファザーリング・ジャパンを考察したい」と伝えたところ賛同が得られ、勧められたのが『社会運動の社会学』でした。中村先生から推薦される本は当たりが多い。

社会運動について大学生に教えるためのテキストを想定した作りで、分かりやすく噛み砕いて書かれた本です。

社会運動を体系的に理解できるよう、社会運動の主要な出来事が事例で登場します。反戦運動や原子力発電所建設反対、水俣病、国際的NGOの活動といった様々な切り口から、社会運動の理論が解説されています。逗子市の池子米軍住宅建設反対運動もトピックであがっています。

ちょうど今、沖縄で行われた住民投票がニュースになっていますが、住民運動の章もありました。吉野川河動堰反対運動を事例に、フレーミング(活動の定義づけ)の理論が紹介されています。

以下、沖縄の問題と相通じるところがあると感じつつ、抜粋で引用します。

河動堰反対運動が始まったとき、運動は最初から「住民投票をすべき」というフレームを提示しているわけではなかった。運動は当初、「建設省は可動堰は必要というが、本当に治水城必要か疑問だし、堰が建設されると長良川のように水質が悪化する」と主張していた。(中略)

建設省は河川工学的に「妥当か否か」でふり切ろうとするが、住民投票の会は民主主義的に「妥当か否か」を問題にする。(中略)

建設省や審議委員会の手続きを問題とした住民投票フレームに対して、建設省や県知事は「可動堰建設は専門家に任せるべきだ」というかたちで新たにフレーミングを行う。(中略)

このようなフレーム論争を通じて、住民投票の会と、建設省や県知事は、ひとりでも多くの敵対者を傍観者へ、支持者を構成員へと変え、自らの活動に有利になるように試みる。(中略)

吉野川の問題が示すように、それが広く支持され人びとを動かした場合には、小さな運動が驚くほどの力を発揮することも珍しくない。一方で、住民投票は「民主主義の誤作動」という建設大臣の発言は「住民投票という名の常識」という別の絵柄をみてしまった人びとの怒りを買うだけであった。

読みおえて、社会運動の多面的な理解ができたと同時に、私は昔から社会運動に興味があったことを思い出しました。

それは、須田春海さん(市民運動全国センター代表世話人)のコラムに出会ったからでした。ここで述べられた「アースデイ連絡所」に、私は20代の頃に毎月通ってボランティアしていたのでした。

私が「社会運動家」になるとまでは思っていないのですが、このテーマで深掘りする意欲が高まりました。

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