寸劇ワークショップは職場の会話を希望のストーリーへ変化させることが狙いです。

連合の事務局から、写真を送っていただきました。自分が講演しているときの写真はあまりなくて、結構うれしかったりします。

連合で男女平等講座を行ったことのレポートをしました。
「連合・第14回『男女平等講座』(男性リーダー対象)でイクボス×心理的安全性のセミナーを実施しました。」

連合の男女平等講座で藻谷さんの講演+私のワークショップをセットで行うのは7年ぶり。検索すると、7年前の開催レポートがありました。そのときも私は「男女とも働きやすい職場づくりのために」の演題で行っていました。

★下画像は、連合「男女平等参画推進NEWS」No.166より転載

受講者の気づきコメントがレポートで紹介されています。

「多くの人と話す中で、男女平等推進のヒントを感じることができた」
「意識改革の必要性、制度の取得等を進める必要があることを感じた」

当時の私が好んで行ったワークショップの手法は、ワールドカフェでした。各地で様々なテーマのワールドカフェを行いました。ワールドカフェをすると、いつも大いに盛り上がります。

でも、最近はあまりやらなくなりました。なぜやらなくなったのかというと、ワールドカフェの対話は気づきを得たり、関係性の構築には有効なのですが、

ワールドカフェをいくらやっても行動変容につながらない とレビューできたからです。

一方、いま私が好みでよく行っている 寸劇ワークショップは実践につながる手応えがあります

寸劇は、フューチャーセッションの手法では「プロトタイピング」、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)でいえば「Design」にあたります。

組織の課題を現状のリソースを積み上げて解決策を練るのではなく、制約条件を抜きにして未来志向で理想の状態をいったん描いてみる。

例えば「理想の職場や家庭」のシナリオを描いてもらうと、夢物語的な奇想天外のストーリーは案外でてきません。扱われる素材は身近な問題が大半で、ちょっとした言葉かけを変えるだけで解決するシナリオを書くチームが多いです。

自作自演のシナリオを演じるなかで、このレベルだったら簡単に実行できると感じられます。他チームの寸劇を見るなかで、やってみたい!と意欲も高まるため、明日からの行動につながりやすい。

寸劇ワークショップで手応えを感じていたなか、中原淳先生のインタビューで寸劇の効果に合点がいきました。

「希望のストーリーを組織の中に蔓延させる」と語られた中原先生のフレーズを、寸劇でまさに体現していたのでした。

以下、インタビューより少し長めの引用です。

WORK SWITCH「働き方改革を進めるのは、意外と簡単なこと?」『残業学』著者・中原淳さんが悩める中間管理職に送る「希望」のエール」
http://work-switch.persol-pt.co.jp/nakaharajyun/

成瀬:いやー、本当に大変ですね、働き方改革時代の管理職は…。日々、現場で奮闘している中間管理職の皆さんにメッセージをいただけますか?

中原:今、皆さんがやられているのは、従業員にとっても会社にとっても社会にとっても良いことだと思うんです。単に時間を削減しているということではなく、個人の仕事人生が長期化する中でそこを完走させるためのサポートだと思います。組織にとっては優秀な社員が入社して長く働けるようにするための組織作りになりますし、社会にとっては多様な人が働けるようになることで貧困に陥る人を減らす社会課題の解決につながります。変わる時には、それなりに痛い目に遭うし、反発もあります。ですが、中長期的に見て、やっていることは間違っていないと僕は信じています。

成瀬:そういう未来があると中間管理職が信じたときに、まず何をやったらいいでしょうか?

中原:なるべく早く、自ら成果を実感することであり、周囲に実感させることです。「長時間労働をやめてよかった」ってみんなに思ってもらうように、意味づけを行います。もちろん、自分が納得できることも重要でしょう。

ルーティン化したものを解除する時は、一時的にやっぱり不満感も高まるし、葛藤も起こります。僕も経験があるのでわかりますが、1カ月目か2カ月目に「もう無理です」みたいな声があがります。ただ、新しい働き方がルーティンになるのも早いですよ。「まあやればできるかな」「やってみればまあ、普通になっちゃうもんだよね」と。それをなるべく早く実感してもらい、「やってみてよかったよね」と意味づけてしまえば勝ちだと思います。

成瀬:意味づけが大事なのですね。どうしたら早く成果を実感できるのでしょうか?

中原:組織の中に「希望のストーリー」、つまり「長時間労働を是正してよかったね」という話を蔓延させることです。例えば、長時間労働を是正したことで学び直せた人、健康になった人、家族との時間ができた人、そういうストーリーを職場で共有していきます。そうすることで、長時間労働を是正することへの抵抗感や罪悪感があっても、胸のつかえがスッと降りるんです。

成瀬:お話を聞いていると、意外と簡単なことなのかもしれないですね。

中原:簡単なことですよ。例えば、チームの定例会議の前に3分でも5分でも「最近自分の生活がどう変わったか」をメンバーに話してもらうのもいいと思います。「最近、早く帰れ、早く帰れ、って課長が言うから帰りましたけどね。その結果、家族との時間が増えたんですよ」とか。良いことがあったら、それをきちっと意味づけていく。大事なのは、そういう地道なことだと思いますよ。だから、「魔法の杖」なんてないよって思うんです。

つづけて、このことに関連した書籍から長めの引用をします。中原淳先生の授業で勧められた、中村和彦訳『対話型組織開発』から引用です。

上掲書、訳者あとがき(625頁)より。

組織の中には、多くの人々が会話の中で用いられている語られ方がある。働き方改革の例をあげると、これまでの支配的な語られ方は、「22時まで仕事をするのは当たり前」、「17時に退社するのは憚れる」というようなものであったと考えられる。

しかし、働き方改革が叫ばれ、会社が残業時間を減らすことに本気に取り組むようになった結果、仕事は効率的に進めて17時に仕事を終える」、「残業は避けて、定時退社が望ましい」、「長々と仕事をするより、短時間で効率的に仕事をすることが重要だ」という、別の語られ方に変化してきている。

だが、多くの企業が働き方改革の施策として、20時になったら会社の電気を消す、残業の上限枠を減らすといったルールや仕組みを儲けることで対処している。そのようなハードな側面の変革だけではなく、組織内で語られる会話が変わること(ソフトな側面の変革)の重要性を、対話型ODは示唆している。対話型ODでは、組織の中での語られ方が変わること、組織の日常における会話の言葉が変わることが、本質的な変化だと捉えている。

「残業を減らせと上から言うなら仕事も減らしてくれ。これ以上個人で対応するのは無理」という不平不満が語られる会話から、「職場のみんなで協働して仕事を効率化し、活き活きと仕事をしよう」と語られる会話へ変わること。「仕事は辛いものでストレスがあるのは当たり前」という発言から、「仕事はしんどいこともあるけど、協働してやり遂げる達成感も味わえる」という発言に変化していくこと。

そのような会話の変化は、マインドセットや関係性の変化から生まれ、マインドセットや関係性のさらなる変化を促進する。社会構成主義を端的に表した表現である、「言葉は世界を創る(Words create world)」ならぬ「言葉は職場を創る」、「言葉は組織を創る」のである。

職場の会話を、希望のストーリーに変化させる。そのためのマインドセットと、関係の質を高めることを狙いたい。

「言葉は職場を創る」

次回の研修では、このフレーズを借用したいと思います。

 

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