中原淳+パーソル総合研究所『残業学』

中原淳先生+パーソル総合研究所による新刊『残業学』。発売されるを楽しみにしていました。

通読し、残業の未来に希望を抱ける感想をもちました。絶望でも、諦めでもなく。

2017年4月に立ち上がった「希望の残業プロジェクト」にて二万人を超えるビジネスパーソンを調査した研究成果を元に、残業の実態を分析データから様々な切り口で解明します。エビデンスに基づいて解説は、圧倒的な説得力がありました。

例えば、本書で紹介されていた残業実態マップ(P92)。

残業が多い業種と、サービス残業が多い(残業代が支払われていない)業種が一目瞭然です。
*下記画像は、パーソル総合研究所「希望の残業学」WEBサイト内のレポート「業種・職種別残業実態マップ─どの業種が、どのくらい働いているのか」より転載

サービス残業が多い筆頭に「教育、学習支援業」が挙げられています。

私も個別指導塾で働いていたときが最もサービス残業が多かったと思い出しました。又、残業学の調査対象は民間企業のみで学校は対象外ですが、学校の先生も残業が多いと本書で指摘されていました。

各章は、見出しのフレーズに思い当たるところ大でした。

  • 第3講 残業麻痺ー残業に「幸福」を感じる人たち
  • 第4講 残業は「感染」し、「集中」し、「遺伝」する」
  • 第5講 「残業代」がゼロでも生活できますか?

残業問題への解決策も、エビデンスをもとに論じられています。

  • 第6講 働き方改革は、なぜ「効かない」のか?
  • 第7講 鍵は、「見える化」と「残業代還元」
  • 第8講 組織の生産性を根本的から高める

解決策では「外科手術」と「漢方治療」のたとえ話がとくに分かりやすいと感じたのでした。

本書全体を通じて、残業あるある話が満載です。経済成長期にさんざん残業をされた方も、そうした上司に仕えてしまった部下も共感できるところが大と思いました。

と、ここまで感想を書いてみて、やはり私も自分自身の体験談で残業の問題を捉えがちなことに気がつきました。

本書の「はじめに」で、次のように書かれています。(P7-8)

巷には「長時間労働の是正の本」や、「職場の生産性に関する本」があふれていますが、これらの中にはデータやエビデンスを示していないものが散見されます。

長時間労働の是正という「とてつもない難問」を、「私の残業論」という「個人の経験談」だけで解決しようとする書籍があとを絶ちません。

本書を通読すればおわかりいただけると思いますが、長時間労働は構造的に生まれているものであり、こうした付け焼き刃的な方法では、決して問題を解決することはできません。

長時間労働の問題は歴史的な背景や雇用形態、心理構造や経済的事情などが複雑に絡み合っていて「とてつもない難問」です。経験談に基づくソリューションで解決できる代物ではありません。

かくいう私も労働問題の本こそ出してはいませんが、働き方改革のテーマで講演をしている身であります。

長時間労働の是正という「とてつもない難問」に対し、どこからアプローチしたらよいものだか思いあぐねた末に、伝えやすいところで経験談から語り始めます。

自己紹介ネタで超長時間労働の経験談を話します。そんな私にとって、「ウザすぎる!残業の武勇伝」のフレーズがイタイ!

講演で調査データを使ってもいます。しかし、自説を伝えるのに都合のよいデータを引っ張ってきて、説得のレトリックとして活用している面が否めません。

本書のエビデンスによる圧倒的な説得力を前に、自分が行なう講演内容を今一度見直さないといけないと思い知らされたのでした。

うーむ、参った。この仕事で残業時間が増えるかも?!

「希望の残業学」最終講、中原先生のラストメッセージを胸にがんばります。

教室を出たら、「事」をなすのみ

余談ですが・・

本書を出張にいく途中の東京駅の書店で購入し、車中と出張先の食事中、研修中の昼休みで読了しました。

業務時間内に読書しても構わないのですが、さすがに研修している最中は読むのを控えました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA