福島県の研修施設で「住民協働」をテーマにした自治体職員向けの合宿研修。1日目が終わって宿泊室で過ごす夜のお供は、松下啓一先生のご著書。
松下先生に、逗子市の自治基本条例策定ワークショップや検討委員会で随分とお世話になりました。今年3月で相模女子大学を退官されましたが、大学教授として最後の仕事が逗子市だったとのこと。
(→松下先生のブログ「☆大学教授としての最後の仕事・自治基本条例検討委員会(逗子市)」)
松下先生の講義を何度かお聞きしました。市民向けワークショップの進行をお願いしたこともあります。
平易な言葉で優しい口調ながら、語られる内容は骨太。愛知県新城市や流山市等での実践経験に基づいた解説は、職員に対しても大きな説得力がありました。
地方自治に関して「松下イズム」ともいえる思想や信念があると感じます。例えば、本書に著される「協働」の定義は独特です。
協働の目標は、自治の実現です。自治とは市民が相互に連携・協力して、市民や地域が抱える課題を解決して、市民一人ひとりが幸せに暮らせる社会を実現することです。(中略)
つまり、協働とは、行政と同時に市民も公共性として、市民一人ひとりが幸せに暮らせるまちをつくることと定義することができると思います。
私が福島で教えている研修教材にある協働の定義(日本NPOセンターによる)と比べると、踏み込み具合が半端ないのが分かります。
協働とは、「異種・異質の組織」が、「共通の社会的な目的」を果たすために、「それぞれのリソース(資源や特性)」を持ち寄り、「対等の立場」で「協力して共に働く」こと
無機質な印象のある定義より、松下イズムの血が通った協働の定義「市民一人ひとりが幸せに暮らせる社会を実現すること」に共感するところ大です。
松下先生は地方自治の布教者であり、私も松下イズムの薫陶を受けました。現在、本書でも強調される「一緒にやらない協働」を実践している最中でもあります。
ただ、私自身は協働について信じきれていないところがありました。今年3月まで四年間務めた逗子市市民協働コーディネーターの仕事を振り返ると、成功体験より挫折した経験が多く、「協働は手強い」という実感が残りました。
そのため、協働の進め方やコツなどは人に教えられるレベルになったのですが、協働を広める信念をもつまでに至りませんでした。スペシャリストにはなれたけれども、布教者のレベルには到達できず。
本書を読んで改めて、松下先生と私では専門性の高さはもちろん比べものにならないのですが、それにも増して成功体験の豊かさで格段の違いがあると思いました。
松下先生がどこかの市町で首長にならないかしら。松下市政のまちづくりを見てみたい気がします。
「励ます地方自治」のタイトルどおり、職員や市民、そして議員さんが励ましあえるまちが実現できたらすごいです。
・・逗子市は12月に市長選ありますよ。
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