先週金曜、都内の某市職員を対象に「タイムマネジメント研修」を実施しました。昨年はワークライフバランス研修を行い、二年連続で登壇です。
男女共同参画推進の一環として行われる研修でした。女性活躍推進には働き方改革が必要と強調し、東京都知事のイクボス宣言の話題を提供すると、皆さん関心が高い様子でした。
ワークライフバランスを進めるにあたって何が必要か、庁内でアンケート調査をされたとのこと。「タイムマネジメントを学びたい」との声が多く、今回の研修実施と相成りました。
ワークライフバランスの本質はタイムマネジメント、と私は捉えています。職員皆さんの意識は合っています。ワークライフバランスを突き詰めると、有限なる人生時間を有効に活用すること、つまり、1日24時間/人生80年時代を有意義に過ごすかを考えることにあり。
通常のタイムマネジメント研修は、講師(研修会社)の有するハウツーの解説と習得が中心となります。時間術は色々とあり、私も朝4時起きやメールは即レス・三行以内など実践しているものが幾つかあります。
ただ、私自身がハウツーに関心が薄く。ハウツーよりも「自分の人生をどう生きるか」を考えること、そのなかで「’仕事’をどう位置づけるか」を明確に意識することが大切と思っているため、仕事術の話しはあまりしませんでした。「期待したものと違っていた」などの感想がきませんように。
ここ最近、研修で使うようになったスライドがあります。私の研修テーマは「自分らしくいきいきと働く」ですが、いきいきと働くための秘訣は二つあります。それは「主体性」と「人間関係」。やりがいのある仕事に取り組めていて、職場の人間関係が良好であれば、人は楽しく働くことができます。
これを言いたい気持ちになっているのは、電通社員の過労自殺問題で「残業100時間で死ぬのは情けない」と苦言した大学教授の言葉が、脳裏に引っかかっているからです。
残業時間と過労死の因果関係については、厚労省が時間外労働と健康障害リスクの判断基準を示しており、議論の余地はありません。
発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる(平成13年12月12日付け基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)
「残業月80時間以上は過労死ライン」と示されています。でも、と私もつい言いたくなってしまうのは、労働時間だけの問題ではないと思うからです。労働時間の長さ以上に「主体性の確保(やらされ感がないこと)」が大事です。
夜中まで仕事していたとしても、やらされ感なく仕事に打ち込めていて、上司が適切にバックアップしていれば、今回の悲劇には至らなかったはず。そう思うと、残念でなりません。もちろん、深夜に及ぶ過重労働を肯定するわけではなく、自分の都合で休みたいときにきちんと休めることも欠かせません。
電通社員が自殺された後も過労死のニュースが後を絶たないのですが、人生の中で「仕事」の位置付けを明確にしておいた方がいい。自分の人生と会社の命令、どちらが重いのか。
小池知事が「ワーク・ライフ・バランス」ではなく、あえて「ライフ・ワーク・バランス」と、ライフ(人生)を先に持って来ています。正しい見解と私は思いました。
ところで、ベストセラー『WORK SHIFT』のリンダ・グラットン博士による近著『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』を読みました。衝撃的な内容でした。
私たちの人生は、これまでになく長くなる。私たちは、人生のさまざまな決定の基準にしているロールモデルより長い人生を送り、社会の習慣や制度が前提にしているより長く生きるようになるのだ。それにともなって、変わることは多い。変化はすでに始まっている。あなたは、その変化に向けて準備し、適切に対処しなくてはならない。
「教育→仕事→引退」の3ステージが、もはや成り立ちません。100年生きるつもりで老後資金を計画し、そのために夫婦で稼いでリスクヘッジし、余暇はレクリエーション(娯楽)をやめてリ・クリエーション(再創造)することで多様な選択肢をもたないと、変化に対応できず、長寿化の恩恵を受け取ることができない。
なかでも、これまでのロールモデルであった、ずっと同じ会社で働こうとすることのリスクが高い、とグラッドン博士は断言しています。「この会社ではやっていけない」と思うところまで行きついたら、死を選ぶより先にキャリアチェンジを試みるのがいいのです。
私自身でいえば、38歳でサラリーマンを卒業して以来、パラレルキャリアを邁進中。リスクをとってキャリアコースをチェンジし、一歩先ゆくライフシフトをしていたつもりでした。そして、76歳まで働く(41歳で買った住宅の35年ローンが終わる年齢)と心に決めていたのですのが、本書の教えにより「90歳まで働かないといけない」と分かり、青ざめました。
少し厚い本ですが、おすすめです。是非ご一読を。
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